認知症の父親のあっけない死
父親が「誤嚥性肺炎」と診断され、もう家へは帰ることができなくなりました。「誤嚥性肺炎」とは、食べ物が食道にいかずに気管にいき、苦しくて咳きこむ病気です。
その処置法としては「吸引装置」で、気管に入った異物を吸い込んで取り出すことです。「誤嚥性肺炎」になると、ほとんどの人が咳きこんで苦しい思いをします。
本人が一番辛いのですが、その様子を見ている家族はまた辛くて見てられません。家庭ではそんな吸引装置もなく、処置をすることは不可能で入院が必要なんです。
そこで、もう一つの方法は「胃ろう(PEG)」と呼ばれる処置をします。PEG(ペグ)とは、内視鏡を使って「おなかに小さな口」を造る手術のことで、その小さな口から食物や水分、医薬品を流入させる方法です。最近では人工的水分栄養補給法と呼ばれているようです。
しかし、この方法は「胃腸」がある人に適していますが、父親のように胃を取り除いていれば、この方法を用いることはできないようです。
やはり、吸引処置しか方法はないのでしょうか?そう思っていた矢先、入院して1か月後、早くも転院を言い渡されたのです。同じ病院に3ヶ月以上は居られないとは聞いていましたが、こんなに早く転院とは驚きました。
救急で入院したのが原因だったのでしょうかは不明です。幸い、転院先は近くだったのですぐに移ることができました。転院病院では入院のときに「延命治療」を聞かれました。
父親は気管に異物が入り、吸引して楽になりましたがその時に「もう死にたい」と漏らしていたので、医師にその旨を伝え、医師も了承しての入院となったのです。
入院して2ヶ月が経過しようとしていたときです、深夜に病院から電話が入り、父の死を伝えられました。私たちは驚き、母親に父親の死を伝え、母親を連れて病院へ出向き父親と対面しました。
母親は父親の死を忘れ「お父ちゃん、良く寝ている」と言う有り様で母親の認知症を再確認しました。その夜はすぐに斎場に連絡して父親を自宅に連れてきたのです。